渡邉由杉
『パーム樹下のオニオオハシ』
この度は、外務大臣賞を受賞させていただきありがとうございます。
今回の画題はクチバシが黄色く体が漆黒のオニオオハシにしました。
カラフルなクチバシとは対照的に体がモノクロで、とても大きいクチバシを支えながらぴょんぴょんと歩く姿がなんとも愛らしくて、動物園に行くたびにいつか描いてみようと写真におさめておりました。
構図は横長、縦長色々試して最終的に縦長にし、2羽を一緒に遊ばせることにし、黄色などで差し色を入れることも考えたのですが、やはりここは墨画らしくモノクロで色味を出すことにして、8段階の墨色を調整しました。
昨年の孔雀作品で筋目描きを取り入れ、描いていてとても面白かったので、今回も、羽、脚、パーム樹の葉や幹はその技法を使いました。
パーム樹の尖った葉は、葉脈の直線がずれないよう、鉛筆型の木炭で1枚1枚下絵を描いてから筆で描いています。
下部の木は新聞紙を切り抜いて、ドーサ液と墨を使いスタンピングし、苔がふわふわと着いている様子を海綿でポンポンとおさえ、上部の木は、蓮筆を使った三墨法で木が木に巻きついている様子を表現し、こちらの苔はたらし込みで表現しました。
オオオニハシのクチバシはムラなく塗りたかったのでドーサを引いてから模様を入れています。
やっと自分の描きたいものが、以前より時間をかけずとも思うように描けるようになってきたと感じています。
この先自分が墨画で何をしていきたいのかをずっと考え続けており、自分自身を表現することになるだろうということはわかっているのですが、それが何なのかがまだよくわからないので、その本質はこの先も掘り下げていきたいと思います。