top of page
第24回国際墨画会展 受賞作品
作品の上でクリックすると拡大表示され、お名前やタイトル、コメントを見ることができます
Click on the work to enlarge it and you can see the artists' name, the title of the work and the artist's comments.
外務大臣賞/ Foreign Minister Award

村松美和 『私の庭』
この度は、このような素晴らしい賞を頂き、大変嬉しく、光栄に思っております。ありがとうございます。
私は国府津という町に生まれました。近くに機関車の車庫があり、そこで働く人達の集合住宅の側には大きな鳥小屋がありました。
水道がまだなく、井戸水をポンプで汲み上げていました。また庭には、父が作った池に金魚がおり、その周りにはへちまの棚があるような...そんな所です。
今回、鶏を描きたいと思い、実際に写生しようと、神奈川県の動物園に連絡をしましたが、鶏を飼育してる所は何処にもありませんでした。東京都では唯一上野動物園のみでした。
また、水墨画の古典の画題にあるへちまや木通を描こうと思っても見かけることはなく...
最近まで、毎年ツバメが巣を作っていた軒先は新しいビルに建て替わっています。
そんなことを考えると、私の描きたいものは、私の原風景なのかと思います。これからも、楽しく描いていきたいと思います。
ありがとうございました。
村松美月
私は国府津という町に生まれました。近くに機関車の車庫があり、そこで働く人達の集合住宅の側には大きな鳥小屋がありました。
水道がまだなく、井戸水をポンプで汲み上げていました。また庭には、父が作った池に金魚がおり、その周りにはへちまの棚があるような...そんな所です。
今回、鶏を描きたいと思い、実際に写生しようと、神奈川県の動物園に連絡をしましたが、鶏を飼育してる所は何処にもありませんでした。東京都では唯一上野動物園のみでした。
また、水墨画の古典の画題にあるへちまや木通を描こうと思っても見かけることはなく...
最近まで、毎年ツバメが巣を作っていた軒先は新しいビルに建て替わっています。
そんなことを考えると、私の描きたいものは、私の原風景なのかと思います。これからも、楽しく描いていきたいと思います。
ありがとうございました。
村松美月
文部科学大臣賞 / MEXT Minister's Award

佐々木 舞 『嫁ぐ日に』
今作品は、昨年の秋に姪の結婚が決まったと姉から連絡を受け、ちょうど展覧会作品の構想を練っていたところで、それならば姪の幸福を祈るような絵を描こうと決めたものでした。
花嫁ならば白い花が良いだろうと、いろいろと花言葉を調べ、「富貴」「壮麗」がふさわしいだろうと牡丹にしました。
大輪の花が咲きほこるように、たくさんの祝福を、どうか幸多からんことを、そのような祈りを込めて筆を進めていきました。
しかし、仕上げが近づいてきたところで違和感を覚えたのでした。
華やかな花嫁をイメージして描いていたにも関わらず、なんだか寂しい絵になってしまったのです。
おかしいな...、と思いつつも仕上げに向かいましたが、花が泣いているように見えたのでした。失敗したのか?と不安になりました。
そんな時に、部屋に陽の光が差し込んできて、カーテンが絵に影を付けました。
そして、わかりました。
ーああ、この絵は、花嫁を描いたものではなく、花嫁の母を描いたものなんだ。
カーテンが影をつけた部分を再現してみることにし、そうすると、中央の牡丹の花は、嬉しさと寂しさが複雑に絡み、様々な思い出が溢れ、子育ての卒業という勲章を胸に、入り乱れるたくさんの思いとともに娘の幸せを願い、送りだす母の姿となったのでした。
他の牡丹は、姪に思いを寄せる人々です。
そんな心象風景のような絵となり、なので、タイトルは「嫁ぐ日に」としました。
この度のことは福音となり、姪はきっと幸せな家庭を築いていくことでしょう。
深く感謝申し上げます。
花嫁ならば白い花が良いだろうと、いろいろと花言葉を調べ、「富貴」「壮麗」がふさわしいだろうと牡丹にしました。
大輪の花が咲きほこるように、たくさんの祝福を、どうか幸多からんことを、そのような祈りを込めて筆を進めていきました。
しかし、仕上げが近づいてきたところで違和感を覚えたのでした。
華やかな花嫁をイメージして描いていたにも関わらず、なんだか寂しい絵になってしまったのです。
おかしいな...、と思いつつも仕上げに向かいましたが、花が泣いているように見えたのでした。失敗したのか?と不安になりました。
そんな時に、部屋に陽の光が差し込んできて、カーテンが絵に影を付けました。
そして、わかりました。
ーああ、この絵は、花嫁を描いたものではなく、花嫁の母を描いたものなんだ。
カーテンが影をつけた部分を再現してみることにし、そうすると、中央の牡丹の花は、嬉しさと寂しさが複雑に絡み、様々な思い出が溢れ、子育ての卒業という勲章を胸に、入り乱れるたくさんの思いとともに娘の幸せを願い、送りだす母の姿となったのでした。
他の牡丹は、姪に思いを寄せる人々です。
そんな心象風景のような絵となり、なので、タイトルは「嫁ぐ日に」としました。
この度のことは福音となり、姪はきっと幸せな家庭を築いていくことでしょう。
深く感謝申し上げます。
東京都知事賞 / Tokyo Governor's Award

安部彩英 『カサマツの向こうに世界遺産』
パラティーノの丘から臨むコロッセオ
この度は東京都知事賞を頂き、大変嬉しく光栄に存じます。
25 年も前になりますがイタリアに住んでいたことから、毎年の出展にて、思い出と共に特徴ある風景を描いています。
第 24 回の題材に選んだのは、世界遺産のひとつであるローマのコロッセオです。
フォロ・ロマーノとパラティーノの丘のちょうど中間あたりから 3 本の傘型マツの向こうにちょうどコロッセオが臨める場所があります。年月が経っても 3本は健在で、この特徴的な風景を描いてみようと思いました。
「カサマツの向こうに世界遺産」と題名を付けましたが、臨む場所もその周囲も世界遺産ですので、贅沢な場所に立って見ている贅沢な風景と言えます。
1 か月ほど前に新教皇誕生のニュースで世界中から注目を浴び、同時期にローマを題材に描けたことも感慨深いです。
麻紙に墨、顔彩を混ぜ塗り重ねて、夕刻を表現しました。墨色の中で朱と臙脂が主張し過ぎず、柔らかく混ざり合うような空に仕上げたいと思い、淡い色から徐々に何度も重ねていきました。夕日を反射しながらやがて夕闇へ、ライトアップの光を受けて浮かび上がるコロッセオの姿を見せたく、金の顔彩を多めに使いました。着色によって華やかさ、派手さ、自然の美しさを見せながら、墨色だけではない水墨画に挑戦した作品です。
(写真は今春にローマを訪れた友人に撮ってきていただいたものです)
雅号 安部彩英(Sae AMBE)
この度は東京都知事賞を頂き、大変嬉しく光栄に存じます。
25 年も前になりますがイタリアに住んでいたことから、毎年の出展にて、思い出と共に特徴ある風景を描いています。
第 24 回の題材に選んだのは、世界遺産のひとつであるローマのコロッセオです。
フォロ・ロマーノとパラティーノの丘のちょうど中間あたりから 3 本の傘型マツの向こうにちょうどコロッセオが臨める場所があります。年月が経っても 3本は健在で、この特徴的な風景を描いてみようと思いました。
「カサマツの向こうに世界遺産」と題名を付けましたが、臨む場所もその周囲も世界遺産ですので、贅沢な場所に立って見ている贅沢な風景と言えます。
1 か月ほど前に新教皇誕生のニュースで世界中から注目を浴び、同時期にローマを題材に描けたことも感慨深いです。
麻紙に墨、顔彩を混ぜ塗り重ねて、夕刻を表現しました。墨色の中で朱と臙脂が主張し過ぎず、柔らかく混ざり合うような空に仕上げたいと思い、淡い色から徐々に何度も重ねていきました。夕日を反射しながらやがて夕闇へ、ライトアップの光を受けて浮かび上がるコロッセオの姿を見せたく、金の顔彩を多めに使いました。着色によって華やかさ、派手さ、自然の美しさを見せながら、墨色だけではない水墨画に挑戦した作品です。
(写真は今春にローマを訪れた友人に撮ってきていただいたものです)
雅号 安部彩英(Sae AMBE)

国際墨画会大賞 / Association Grand Award

阿施京子 『晩秋』
お寺や神社、観光地にあるようなしっかりお手入れされている松ではなく野放しにされている松を選びました。
そしてその力強さにも心惹かれました。
役目が終わった松の葉、枝、菊の花の役目を終わり行く美を表してみました
自分自身もその様な年齢になりつつあり、弱さだけでなく強さを表現したかったのです。
構図は最後まで悩みました。
頭でっかちにならないよう岩でバランスを取りました。
始めは画仙紙で描いてみましたが今一つ奥行きが出ず二層画仙紙に切替ました。
菊の花の花びらの線描きも二層画仙紙の方がよく表れたと思います。
松の葉、幹や枝は薄墨から少しずつ濃墨にして立体感を出しました
枯れた葉は薄墨、擦れで表してみました。
松の落ち葉も菊の花に刺さって自然な雰囲気を出しました。
そしてその力強さにも心惹かれました。
役目が終わった松の葉、枝、菊の花の役目を終わり行く美を表してみました
自分自身もその様な年齢になりつつあり、弱さだけでなく強さを表現したかったのです。
構図は最後まで悩みました。
頭でっかちにならないよう岩でバランスを取りました。
始めは画仙紙で描いてみましたが今一つ奥行きが出ず二層画仙紙に切替ました。
菊の花の花びらの線描きも二層画仙紙の方がよく表れたと思います。
松の葉、幹や枝は薄墨から少しずつ濃墨にして立体感を出しました
枯れた葉は薄墨、擦れで表してみました。
松の落ち葉も菊の花に刺さって自然な雰囲気を出しました。
国際墨画会準大賞 / Association Semi Grand Award

清水二葉 『孤高』
この度は国際墨画会準大賞をいただきまして誠にありがとうございます。
今まで、獣を工筆画で描くのは、筋肉、毛の表現が大変な印象があり、先延ばしにしていました。しかしこのままではいけないと思い、興味があるユキヒョウを描こうと決め、今作のモチーフになりました。凛々しい姿、愛らしい姿、親子の微笑ましい姿、ユキヒョウのどの面を絵にするか悩みましたが、野生のユキヒョウは、厳しい山岳地帯に住み、群れをなさず、野生の姿を見るのは至難の業。やはり、幻の動物と言われる、その孤高の姿を描くことにしました。
ユキヒョウは工筆画で繊細に。特に毛は「細く、細く、軽やかに」と唱えながら描いていたような気がします。一方ユキヒョウのいる崖は、険しさを一筆(水墨画)で表現しました。また、高山、雪、夜が醸し出すキーンとした雰囲気を表現するため、背景は極々淡い墨を薄く重ねています。描いている際、水なのか、墨なのか、紙の影なのか分からなくなるくらいでした。
ユキヒョウ、崖、空気、全て同じ油煙墨です。濃度や塗り方の違い、色を加えたことで異なる墨色が表現できました。
作品を振り返れば、あーすればよかった、こうすればよかった、と反省点ばかりが思い浮かびます。工筆画を始めて今年で12年、干支を一周しました。しかし、まだまだ工筆画、水墨画とも学ぶことばかりです。自分の表現が高められるよう、これからも精進して参りたいと思います。
今まで、獣を工筆画で描くのは、筋肉、毛の表現が大変な印象があり、先延ばしにしていました。しかしこのままではいけないと思い、興味があるユキヒョウを描こうと決め、今作のモチーフになりました。凛々しい姿、愛らしい姿、親子の微笑ましい姿、ユキヒョウのどの面を絵にするか悩みましたが、野生のユキヒョウは、厳しい山岳地帯に住み、群れをなさず、野生の姿を見るのは至難の業。やはり、幻の動物と言われる、その孤高の姿を描くことにしました。
ユキヒョウは工筆画で繊細に。特に毛は「細く、細く、軽やかに」と唱えながら描いていたような気がします。一方ユキヒョウのいる崖は、険しさを一筆(水墨画)で表現しました。また、高山、雪、夜が醸し出すキーンとした雰囲気を表現するため、背景は極々淡い墨を薄く重ねています。描いている際、水なのか、墨なのか、紙の影なのか分からなくなるくらいでした。
ユキヒョウ、崖、空気、全て同じ油煙墨です。濃度や塗り方の違い、色を加えたことで異なる墨色が表現できました。
作品を振り返れば、あーすればよかった、こうすればよかった、と反省点ばかりが思い浮かびます。工筆画を始めて今年で12年、干支を一周しました。しかし、まだまだ工筆画、水墨画とも学ぶことばかりです。自分の表現が高められるよう、これからも精進して参りたいと思います。
清水由美子 『紫薇』
今回、国際墨画会準大賞という素晴らしい賞をいただき誠にありがとうございます。
画題の紫薇(シビ)は、百日紅の漢名で天文学的な意味と天帝という象徴的な意味を持ちます。
百日紅の美しく滑らかな木肌と小さな花を描くにはどうしたら良いか構図と描き方には時間をかけました。
尾長は色合いが美しく、迷わず絵に加えました。
そして、ラブラドール犬が鳥に「何処へ行くの?」と話しているような後姿を描きました。墨より黒いラブラドール毛並みを墨の色を生かして描くことを工夫いたしました。
今でも百日紅の花の時期に犬と散歩したことやこの作品に向き合っていた時の楽しさが思い出されます。
この度は、本当にありがとうございました。
画題の紫薇(シビ)は、百日紅の漢名で天文学的な意味と天帝という象徴的な意味を持ちます。
百日紅の美しく滑らかな木肌と小さな花を描くにはどうしたら良いか構図と描き方には時間をかけました。
尾長は色合いが美しく、迷わず絵に加えました。
そして、ラブラドール犬が鳥に「何処へ行くの?」と話しているような後姿を描きました。墨より黒いラブラドール毛並みを墨の色を生かして描くことを工夫いたしました。
今でも百日紅の花の時期に犬と散歩したことやこの作品に向き合っていた時の楽しさが思い出されます。
この度は、本当にありがとうございました。

国際墨画会会長賞 / Association Chairperson's Award

谷口碧水 『歓喜』
栄誉な賞をいただき、驚きで一杯です。作品中の鶴たちも心から喜んでいることでしょう。(作品名:歓喜)
今後も絵心を大事に向上したく思います。
今後も絵心を大事に向上したく思います。
山﨑由美子 『母を偲びて』
15年前、霞会館で、素敵なブドウの水墨画をみてうっとり。子供の頃からお絵描きは苦手分野だったので、私は絵が下手だから、と申し上げたら、いろいろなテクニックを教えるから大丈夫ですと、琴水先生に言われ、国際墨画会に通い始めました。三墨法のグラデーション、滲み、かすれ、たらし込み、水と墨と紙がおりなす、手品のような水墨画が面白い!やり直しができないので早い!白い部分、描かない部分も大切!私にぴったりでした。
一昨年、母が94歳で亡くなり、母の日にカーネーションを贈る相手がいなくなり、さみしくなりました。優しい母を偲んで蓮の花を描きました。
展覧会会場の天井が高いので、紙はいつも全紙サイズ。今回、麻紙、画宣紙、ドーサ引きの3種類の紙で描いてそこから選びました。構図は水の流れのS字、濃い墨で大きな蓮の葉、花は葉の裏からちょっと覗くように描きました。
心が動かないと絵は描けないし、心が落ち着いていないと描き始められない。いつか割り箸1本でささっと、気楽に描いてみたい。
山崎由美子
一昨年、母が94歳で亡くなり、母の日にカーネーションを贈る相手がいなくなり、さみしくなりました。優しい母を偲んで蓮の花を描きました。
展覧会会場の天井が高いので、紙はいつも全紙サイズ。今回、麻紙、画宣紙、ドーサ引きの3種類の紙で描いてそこから選びました。構図は水の流れのS字、濃い墨で大きな蓮の葉、花は葉の裏からちょっと覗くように描きました。
心が動かないと絵は描けないし、心が落ち着いていないと描き始められない。いつか割り箸1本でささっと、気楽に描いてみたい。
山崎由美子

国際墨画会顧問賞 / Association Advisor's Award

小西章仁 『守護者』
この度は国際墨画会顧問賞をいただき誠にありがとうございました。
今回の作品は、狛犬をモチーフにしました。
神や仏を守護するという意味と、見る方の邪気が払われますようにと厄除け祈願がテーマの作品です。
石像でしか見たことがない狛犬を、想像で実体化させた線で描きました。
また縁があって私が幼い頃より唱えました光明真言の梵字(24字)を取り入れ、
光の導く作品となりますよう...
「夜が明けると悩みや苦しみが明るい希望に変わる」という思いの作品にしました。
これからも色んな表現手法を学び精進して参りますのでどうぞよろしくお願いします。
小西章仁
今回の作品は、狛犬をモチーフにしました。
神や仏を守護するという意味と、見る方の邪気が払われますようにと厄除け祈願がテーマの作品です。
石像でしか見たことがない狛犬を、想像で実体化させた線で描きました。
また縁があって私が幼い頃より唱えました光明真言の梵字(24字)を取り入れ、
光の導く作品となりますよう...
「夜が明けると悩みや苦しみが明るい希望に変わる」という思いの作品にしました。
これからも色んな表現手法を学び精進して参りますのでどうぞよろしくお願いします。
小西章仁
中野真紀 『菖蒲に青鷺』
この度はこのような栄えある賞を頂きましたこと、大変うれしく思います。
今年はさわやかな初夏の景色を菖蒲と青鷺で表現してみました。 菖蒲は自宅近くの公園で毎年きれいな花を咲かせるので、いつか作品にしてみたいと思っていました。花びらの曲線や青々と刀のように伸びた葉を、どのような線で描くか、何度も描いて検討しました。
青鷺は、初めて描く大型の鳥で、私にとっては難しい挑戦でした。独特な首のカーブ、羽や脚の特徴を上手くとらえ切れず、制作中は困りっぱなしでしたが、その試行錯誤がとてもよい勉強になったと思っています。
当初は墨だけで仕上げるつもりでしたが、美しい青灰色の羽色を見たまま表現したくなり、墨に藍色を混ぜて描いています。
水墨画歴もいつの間にか長くなりましたが、墨の可能性にますます面白さを感じています。今後も新しい題材・技法に取り組み、表現の幅を広げていきたいと思います。
今年はさわやかな初夏の景色を菖蒲と青鷺で表現してみました。 菖蒲は自宅近くの公園で毎年きれいな花を咲かせるので、いつか作品にしてみたいと思っていました。花びらの曲線や青々と刀のように伸びた葉を、どのような線で描くか、何度も描いて検討しました。
青鷺は、初めて描く大型の鳥で、私にとっては難しい挑戦でした。独特な首のカーブ、羽や脚の特徴を上手くとらえ切れず、制作中は困りっぱなしでしたが、その試行錯誤がとてもよい勉強になったと思っています。
当初は墨だけで仕上げるつもりでしたが、美しい青灰色の羽色を見たまま表現したくなり、墨に藍色を混ぜて描いています。
水墨画歴もいつの間にか長くなりましたが、墨の可能性にますます面白さを感じています。今後も新しい題材・技法に取り組み、表現の幅を広げていきたいと思います。

中国美術報社賞 / Art News of China Award

遠藤智美 『中国美術報社賞』
この度は名誉ある賞にご選出いただきありがとうございました。
私にとって龍は時空を超えたイノチやエネルギーの流れであり、私はその一瞬の流れを切り出しひとつのカタチとして表現しています。実はこの作品を2枚描きました。1枚目を描きあげた際にどうしても納得がいかず、改めて描きあげた2枚目が受賞作品。紙の裏表に墨入れし、ドーサと膠と墨入れの順番を組み立て、感情や感覚的な右脳とロジカルな左脳をフル回転させ仕上げました。
製作中に降りてきた言葉と共に楽しんでいただけたらと思います。
「導かれし世界
すべてが壊れ、
そぎ落とした先にこそ
求める答えがある。
それが自身の希望となる。
小さな希望は一筋の光となり、
その光を自らが放つ。
やがて一筋の光が
大きな光となり
新たな世を創る。
心の眼で本質を視、
生きることを恐れず
歩んだ先に待つ世界へ」
私にとって龍は時空を超えたイノチやエネルギーの流れであり、私はその一瞬の流れを切り出しひとつのカタチとして表現しています。実はこの作品を2枚描きました。1枚目を描きあげた際にどうしても納得がいかず、改めて描きあげた2枚目が受賞作品。紙の裏表に墨入れし、ドーサと膠と墨入れの順番を組み立て、感情や感覚的な右脳とロジカルな左脳をフル回転させ仕上げました。
製作中に降りてきた言葉と共に楽しんでいただけたらと思います。
「導かれし世界
すべてが壊れ、
そぎ落とした先にこそ
求める答えがある。
それが自身の希望となる。
小さな希望は一筋の光となり、
その光を自らが放つ。
やがて一筋の光が
大きな光となり
新たな世を創る。
心の眼で本質を視、
生きることを恐れず
歩んだ先に待つ世界へ」
朝日新聞社賞 / Asahi Shimbun Company Award

池田十詩子 『爛』
春爛漫、満開の桜の下、ゆったりと草をはむ馬のいる光景です。
その穏やかに流れる時間を切り取り描ければと思い筆をとりました。
ここ数年、馬が好きになりテレビやSNSでも馬の姿を追っています。
筋肉質でしなやかな馬体と、枝が柔らかく垂れ下がる枝垂れ桜はいずれも
とても美しく、どことなく似ているような気もします。
桜は満開になると香り立つよう見事に咲き、またあっという間に散る姿は
儚くて、なんとか描いて残したいと思いましたが大変難しくなかなか
思い通りには描けませんでした。
馬は野生の馬や競走馬等々、種類によって体つきも違いますが
今回は競争に明け暮れる日々を終えた馬のイメージです。
筋肉質で美しい馬体は墨の濃淡や三墨法で描くのに適していると思いました。
モノトーンの世界に憧れて入った水墨画の世界ですが、結局いつも
色も使いたくなってしまいます。
まだまだ未熟ですがいつか自分の思いを描けるようこれからも励みます。
その穏やかに流れる時間を切り取り描ければと思い筆をとりました。
ここ数年、馬が好きになりテレビやSNSでも馬の姿を追っています。
筋肉質でしなやかな馬体と、枝が柔らかく垂れ下がる枝垂れ桜はいずれも
とても美しく、どことなく似ているような気もします。
桜は満開になると香り立つよう見事に咲き、またあっという間に散る姿は
儚くて、なんとか描いて残したいと思いましたが大変難しくなかなか
思い通りには描けませんでした。
馬は野生の馬や競走馬等々、種類によって体つきも違いますが
今回は競争に明け暮れる日々を終えた馬のイメージです。
筋肉質で美しい馬体は墨の濃淡や三墨法で描くのに適していると思いました。
モノトーンの世界に憧れて入った水墨画の世界ですが、結局いつも
色も使いたくなってしまいます。
まだまだ未熟ですがいつか自分の思いを描けるようこれからも励みます。
高井俊文 『祖谷 かずら橋』
この度は朝日新聞社賞を賜り大変光栄に存じます。ありがとうございます。
描きましたのは旅行で訪れた徳島祖谷のかずら橋です。
秘境にあり、かずらを使った吊り橋という特異さを感じる風景を水墨画で表現できればとの思いで画題にしました。
比較的苦心したのは2点です。まず吊り橋の支柱となっている大木の力強さやかずらを撚り合わせて丈夫な綱にした素朴で粗野な感じを如何に表現するかということ。
二つ目は木の葉を如何に自然らしく表現するかということです。
大木は存在感を出すため絵の前面に大きく張り出し、木の表面の皺、節をできるだけリアルになるようにしました。かずらも同様でした。
木の葉は主になるのは前面にある杉の葉です。松の葉のようにそれらしい形状を線で表してあとは薄墨でぼかすことにしましたが、最初書き始めてから描いていくにつれ形状がすこしずつ変わってしまい統一感がなくなってしまいました。後方にある木の葉はいろんな種類がありその葉の特徴を
出すのに難しさを感じました。
全体的反省として描き方が微に入り細に入りすぎていなかったか?もっと写意的に表現できなかったのか?という点を感じています。
描きましたのは旅行で訪れた徳島祖谷のかずら橋です。
秘境にあり、かずらを使った吊り橋という特異さを感じる風景を水墨画で表現できればとの思いで画題にしました。
比較的苦心したのは2点です。まず吊り橋の支柱となっている大木の力強さやかずらを撚り合わせて丈夫な綱にした素朴で粗野な感じを如何に表現するかということ。
二つ目は木の葉を如何に自然らしく表現するかということです。
大木は存在感を出すため絵の前面に大きく張り出し、木の表面の皺、節をできるだけリアルになるようにしました。かずらも同様でした。
木の葉は主になるのは前面にある杉の葉です。松の葉のようにそれらしい形状を線で表してあとは薄墨でぼかすことにしましたが、最初書き始めてから描いていくにつれ形状がすこしずつ変わってしまい統一感がなくなってしまいました。後方にある木の葉はいろんな種類がありその葉の特徴を
出すのに難しさを感じました。
全体的反省として描き方が微に入り細に入りすぎていなかったか?もっと写意的に表現できなかったのか?という点を感じています。


田宮晶子 『醒』
この度は素晴らしい賞を賜り、厚く御礼申し上げます。
作品は旅先のタイ・アユタヤ遺跡「ワット・マハタート」で印象的だった「菩提樹に包まれた仏頭」を描いたものです。
絶妙な位置に収まった奇跡の仏頭。目の当たりにした瞬間、その鋭い視線が何処までも追いかけてくる様な不思議な感覚に陥りました。
歴史的背景も過り、その仏頭が「茹で蛙になる前に目醒め、改め、備え、守りなさい...」と強く訴えかけている様な気がして
無性に心が騒つきました。帰国後もその騒つきは治らず強くなるばかり。その騒つきを鎮める為に筆を取りました。
何時に無く画面に感情をぶつけ、熱い思いで臨んだこの作品。私にとって水墨画との向き合い方が変わった節目の一枚となりました。
頂いた賞を励みに、そして師の言葉を心に刻み、更に精進を重ねて参りたいと存じます。
この度は誠に有難うございました。
作品は旅先のタイ・アユタヤ遺跡「ワット・マハタート」で印象的だった「菩提樹に包まれた仏頭」を描いたものです。
絶妙な位置に収まった奇跡の仏頭。目の当たりにした瞬間、その鋭い視線が何処までも追いかけてくる様な不思議な感覚に陥りました。
歴史的背景も過り、その仏頭が「茹で蛙になる前に目醒め、改め、備え、守りなさい...」と強く訴えかけている様な気がして
無性に心が騒つきました。帰国後もその騒つきは治らず強くなるばかり。その騒つきを鎮める為に筆を取りました。
何時に無く画面に感情をぶつけ、熱い思いで臨んだこの作品。私にとって水墨画との向き合い方が変わった節目の一枚となりました。
頂いた賞を励みに、そして師の言葉を心に刻み、更に精進を重ねて参りたいと存じます。
この度は誠に有難うございました。
墨運堂賞 / Bokuundo Award

Serkan Ozcifci 『TAIJITU - 陰陽-』
The two mythological entities—the Dragon of the East (Jp., 青竜/せいりゅう) and the Tiger of the West (Jp., 白虎/びゃっこ)—symbolize the two opposing yet complementary forces of the Yin-Yang duality (Jp. いんよう / 陰陽).
Representing the dynamic Yang aspect, the dragon roams the heavens, while its counterpart, the Yin tiger, is rooted in the earth.
One of the earliest sources to mention this pair is the Yijing (Jp., 易経/えききょう), and the gestures of both figures in the painting pay homage to this ancient Chinese text. Relevant passages include, from Hexagram 1, line 5: "The flying dragon is in the sky," and from Hexagram 27, line 4: "A tiger observing: glaring, glaring."
In accordance with the well-known symbol of Yin-Yang polarity—the Taijitu (Jp., 太極図/しんじたい)—the work was created using two colors: chaboku (Jp., 茶墨) as the dark ink and gofun (Jp., 胡粉) ink stick for the white. It also brings together two distinct painting techniques: Gongbi (Jp. こひつが / 工笔画), known for its detailed brushwork, and Suibokuga (Jp. 水墨画), the expressive ink wash style.
Drawing inspiration from the duality of Heaven and Earth, I extend an invitation to explore the symbolism and numerous contrasting elements embedded within Taijitu.
Serkan Ozcifci
Representing the dynamic Yang aspect, the dragon roams the heavens, while its counterpart, the Yin tiger, is rooted in the earth.
One of the earliest sources to mention this pair is the Yijing (Jp., 易経/えききょう), and the gestures of both figures in the painting pay homage to this ancient Chinese text. Relevant passages include, from Hexagram 1, line 5: "The flying dragon is in the sky," and from Hexagram 27, line 4: "A tiger observing: glaring, glaring."
In accordance with the well-known symbol of Yin-Yang polarity—the Taijitu (Jp., 太極図/しんじたい)—the work was created using two colors: chaboku (Jp., 茶墨) as the dark ink and gofun (Jp., 胡粉) ink stick for the white. It also brings together two distinct painting techniques: Gongbi (Jp. こひつが / 工笔画), known for its detailed brushwork, and Suibokuga (Jp. 水墨画), the expressive ink wash style.
Drawing inspiration from the duality of Heaven and Earth, I extend an invitation to explore the symbolism and numerous contrasting elements embedded within Taijitu.
Serkan Ozcifci
森 広樹 『蝦蟇仙人図』
このたびは墨運堂賞に選出いただき、誠にありがとうございます。
蝦蟇仙人図は、昔から親しまれてきた画題ですが、三本足の蝦蟇がかわいいので、いつか描いてみたいと思っていました。
伝統的な画題を解釈するにあたり、仙人と蝦蟇が一体となりその表情と動きで物語が感じられるような構図を取ることを意識しました。
見る方の記憶に残るような不思議な絵になればと思っています。
蝦蟇仙人図は、昔から親しまれてきた画題ですが、三本足の蝦蟇がかわいいので、いつか描いてみたいと思っていました。
伝統的な画題を解釈するにあたり、仙人と蝦蟇が一体となりその表情と動きで物語が感じられるような構図を取ることを意識しました。
見る方の記憶に残るような不思議な絵になればと思っています。


寺田泰美 『穏やかに在りたい』
昨年、「筆舞賞」をいただき、今年、「墨運堂賞」と大変驚きました。
続けての受賞、とてもうれしく思います。ありがとうございました。
一枚のサンゴ礁の写真を見つけ、描いてみたいと思いました。
しかし、あの色とりどりのサンゴ礁をどうやって、墨色だけで表現するのか?
どうやってあの立体感を出すのか? 水中の動きはどうする?などなど、また出来もしないことをやろうとしている自分がいました。
木越先生のご指導のもと、まず、全体を薄墨で描き、少しずつ少しずつ墨を重ねました。
細かくて、集中するのが大変でした。
別紙で部分的にいろいろ描いては、それを「切り抜き、当てはめ、比べ、描く」を繰り返しました。
画賛「四海波静」昨今、天災人災どこで何が起きてもおかしくない、異常な状態です。世の中の平和・穏やかさを感じとっていただければ幸いです。
続けての受賞、とてもうれしく思います。ありがとうございました。
一枚のサンゴ礁の写真を見つけ、描いてみたいと思いました。
しかし、あの色とりどりのサンゴ礁をどうやって、墨色だけで表現するのか?
どうやってあの立体感を出すのか? 水中の動きはどうする?などなど、また出来もしないことをやろうとしている自分がいました。
木越先生のご指導のもと、まず、全体を薄墨で描き、少しずつ少しずつ墨を重ねました。
細かくて、集中するのが大変でした。
別紙で部分的にいろいろ描いては、それを「切り抜き、当てはめ、比べ、描く」を繰り返しました。
画賛「四海波静」昨今、天災人災どこで何が起きてもおかしくない、異常な状態です。世の中の平和・穏やかさを感じとっていただければ幸いです。
bottom of page